認知症の方、知的障がいのある方、精神障害のある方など判断能力が不十分な方々を支援する制度です。
判断能力が低下すると、介護施設を利用するための契約などの法律行為や財産管理など、自分で行うことが困難になったり、悪徳商法の被害にあわないかと不安になったりすることがあります。
このような方々の為に、代わりに契約をしたり、財産を管理したりして支えていきます。
成年後見制度には、法定後見制度と、任意後見制度の2種類があります。
・法定後見制度
既に判断能力が低下している場合に、家庭裁判所が対象となるかたの判断能力のレベルによって援助者(後見人・保佐人・補助人のいずれか)を選びます。
選ばれた援助者が、対象のなる方の身上監護や、本人に代わって、契約などの法律行為や財産管理など必要な支援をします。
【法定後見制度の流れ】
- 申立て・・・家庭裁判所で手続き案内を受け、申立書や医師の診断書等必要な書類を用意して家庭裁判所に提出をします。
- 調査・監査・・・家庭裁判所が、申立人・後見人候補者等に事情を尋ねたり、本人の意思を確認したりします。その後、本人、申立人、成年後見人等に審判書が送られてきます。
- 登記・・・成年後見人等が審判書を受け取ってから2週間以内に不服申し立てがされなければ、審判が確定し、その内容が登記されます。登記が済むと家庭裁判所から登記番号が通知されます。
- 後見事務・・・家庭裁判所で指導を受けたとおり、本人の財産を預かり、収入や支出を記録し、生活の様子に気を配ります。家庭裁判所から求められたときには、期限までに報告をします。最初の報告は審判確定後1カ月以内に提出する「財産目録」と「年間収支予定」です。*成年後見人等は、財産目録を家庭裁判所に提出するまでは、原則として後見事務をすることができません。
- 後見終了・・・本人が亡くなったときや、本人の判断能力が回復したときには後見は終了します。家庭裁判所に終了の連絡をして、亡くなった場合には相続人等に財産を引渡し、家庭裁判所に後見事務終了報告書を提出します。
・任意後見制度
判断能力があるうちに、将来の代理人(任意後見受任者)を定め、自分の判断能力が不十分になった場合に備えて、身上監護や財産管理などについて「任意後見契約」を公正証書で結んでおきます。将来自分はどんな生活をしたいか。など、自分の将来を自分で決めることができます。
【任意後見制度の流れ】
- 相談・・・判断能力が低下した場合に備え、将来どのように生活をしたいか、財産をどのように管理してほしいかなどを、支援をお願いする人(任意後見受任者)とじっくりと話し合います。
- 契約・・・決定した内容を基に、任意後見契約を公証人の作成する公正証書で結びます。契約の内容は法務局に登記されます。
- 申立て・・・本人の判断能力が低下した場合には、任意後見受任者は家庭裁判所に任意後見監督人選任の申し立てをします。
- 後見事務・・・任意後見監督人が選任されると、任意後見受任者は任意後見人となり、任意後見監督人の指導を受けながら後見事務を行います。任意後見人は任意後見契約に基づき、本人の意思を尊重しながら支援をしていきます。(*任意後見人には取消権はありません。本人が悪徳商法などに巻き込まれないように日頃から連絡を密にすることで、本人を保護していきます。)
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後見事務終了・・・本人が亡くなった場合は、任意後見契約は終了します。また、任意後見人が病気などやむを得ない事情により、契約を解除しなければならない場合は、家庭裁判所の許可が必要です。*本人が亡くなった後、葬儀・埋葬や病院等の清算なども行ってもらいたい場合は、任意後見契約の特約として、任意後見人の業務に追加できます。また、処財産の処分等に希望がある場合は、任意後見契約とともに遺言書を作成し、任意後見人を遺言執行者に指定しておくと、より安心です。